第4回:ソリューション提案力養成~トヨタファイナンス~(2019年10月15日号)

■経営課題を基点に 販売店支援

トヨタファイナンスは、本社・支社の若手・中堅リーダーを対象に、昨年7月から今年4月までの10カ月間、「ソリューション提案力養成研修」を実施した。トヨタ販売店の経営課題の解決に貢献するために、経営診断に必要な知識・スキルを習得するともに、総合経営診断実習を通して、販売店の業務を理解し、企業・地域に寄り添った総合的な販売店支援を行うことをねらいとした。

同社は、トヨタグループ国内唯一の金融会社として、販売金融事業(自動車販売金融・住宅ローン)やクレジットカード事業(加盟店・カード)を展開している。

研修を実施した背景について、黒葛原礼和(つづらはら・ひろかず)・トヨタファイナンス地域統括部支社統括グループグループマネージャーは、「当社では、地域や個社の課題の解決へ貢献していくことで新たな付加価値を上げていこうと模索している。そのためにも、従来の『金融を基点とした販売促進支援』という商品軸での支援から、今後は『経営課題を基点とした販売店支援』という経営軸での支援に変えていきたい。販売店の課題は地域の特性や置かれている状況によって様々だ。販売店の経営課題に応えるためには、経営戦略やマーケティング、財務などにおける、多岐にわたるノウハウが必要だ。それらを推進するにあたっては、まずは営業現場に経営知識やスキルを身につけさせたいと今回の研修を始めた。それらをきちんと理解することで販売店経営者からの信頼も得られる」と語る。

同研修は、全日制実践型ビジネススクールとして、60年以上の実績を持つ日本生産性本部「経営コンサルタント養成講座」のカリキュラムをもとに策定された。

受講にあたっては、経営戦略やマーケティング、会計、財務、現場改善などに関する書籍や演習課題が事前に配布され、参加者はそれらを学習したうえで研修に臨んだ。

8月の第1回(1日)では企業診断の全体像や会計・財務の一般知識などを、8月の第2回(2日)では業務改善の手法や改善を実行する現場マネジメントなどを、それぞれ学んだ。

11月の第3回では4月の「総合経営診断実習」のための現状把握を8泊9日で実施した。実習先である販売店からの企業概要の説明を受け、店舗見学、経営幹部インタビューを踏まえて、チームごとに対象店舗の業務理解、現状把握を行い、商圏分析をもとに、店舗ごとの販売戦略の提案も含めて課題を報告した。

12月の第4回(2日)では経営戦略やマーケティング、1月の第5回(2日)では会計・財務、2月の第6回(2日)ではデータ分析マーケティング(重回帰分析、カスタマージャーニーマップ演習等)を中心に学んだ。

3月の第7回(2日)は「総合経営診断実習」の事前準備として開催され、実習先企業の財務分析や環境分析などを踏まえ、課題テーマごとにチームに分かれて検討が行われた。

4月の第8回では「総合経営診断実習」を8泊9日で開催した。社長インタビューや経営幹部との議論を経て、最終日に行われた報告会では、経営課題を提起したうえで、新規事業戦略候補を具体的に提示した。売上及び収益拡大・生産性向上に資する取り組み項目についての提案も行われた。

「今回の研修で手ごたえを感じたので、今後は、販売店の実情を理解した上での経営課題解決に資する提案をよりいっそう進めていきたい」(黒葛原氏)としている。

■経営診断の流れを学習

(黒葛原礼和・トヨタファイナンス 地域統括部支社統括グループグループマネージャーの話)

今、自動車業界は100年に一度の変革期と言われている。新たな移動サービスを提供する「MaaS」や「CASE」(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)へと競争の軸足が変化しつつある。

また、金融においても、フィンテックの進展による決済手段の多様化、キャッシュレス化など、動きはかなり急であり、部分ではなく全体の動きを察知し環境変化に対応できる力が求められる。

このような状況の中、当社の取引先である販売店は、人口減少や顧客の高齢化などを背景として、既存の保有ビジネスに加えて、地域の困り事に向き合うための生活サービスなど、新しいサービスを検討・開始する動きも出始めている。

今回の研修を通じて、従来意識できていなかった地域特性の理解や販売店の経営課題の分析・把握を踏まえて販売店の経営支援をどのように行っていくかについて考えた。ありがちな座学研修で終わらないようにトライアルとして販売店にもご協力をいただき、業務として商圏分析やマーケティング戦略など経営診断の一連の流れをじっくり学ぶことができた。

それなりの日数をかけたことで、参加者の負荷もかかったが、研修後のアンケートでは参加者全員がやりがいや面白さを感じたと答えるなど、研修の評価は高かった。「学んだ内容を活用することで、販売店へ今以上の貢献ができるという可能性を感じた」といった意見が見られた。

「自社の現状はどうなのか、どこにチャンスがあるのか、考えを整理する良い機会となった」とご協力いただいた販売店からの評価も高く、今も継続して、報告会での提案内容の実現に向けたサポートをさせていただいている。座学だけではとてもここまでいかなかっただろう。

■顧客の課題解決で人材育成

(ファシリテーターを務めた加藤篤士道・日本生産性本部主席経営コンサルタントの話)

今回の研修は、経営戦略やマーケティング戦略など、戦略系を重視したプログラムとした。研修を実施している最中にも、自動車業界がどんどん変わっていくので、環境変化に対応して研修内容を見直した。総合経営診断実習は、販売店の盤石な経営基盤構築へ貢献することをねらいに実施された。従来の金融商品の軸にとどまらない提案活動の実現に向け、販売店の業務を理解し、企業・地域に寄り添った総合的な支援を行えるよう心掛けた。顧客企業にふさわしい経営課題を見つけて提案するということを一連のストーリーとして学んでもらうスタイルだったが、それは営業部門を持つ企業なら必要なことだ。顧客の課題を解決することで自社の新しいビジネスにつなげていく研修を行うことによって、自社の人材育成も図れるし、実習先企業との信頼関係も構築できる。

■地域の課題解決、重要な視点

(実習担当の樋口伸亨・日本生産性本部主任経営コンサルタントの話)

参加者にとってはハードな研修だったが、実習を通じて、机上で考えていたことの精度が上がり、様々な壁を突破して、最終的には、具体的かつ実現可能性の高い提案ができたと思う。

一般に、経営診断実習を行うことで、実習参加者の思考のプロセスが共有化できる。実習期間中は実習先の経営課題を集中して考えるので、当事者意識が一段と高まり、実習先企業に対する親近感や愛着も生まれる。

実習では、自治体や他の企業などを巻き込んで、地域の課題を解決するための提案を行った。地域の課題を自社だけで解決するのではなく、協働や提携によって地域全体で解決していくことは今後、業種を問わず、非常に重要な視点になっていくだろう。

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