製造業のノウハウを生かしたサービス業の改善・改革②(2016年4月25日号)

■改善の具体的な進め方

今回は、事例をもとに改善キーワードと動画を活用した改善の具体的な進め方を紹介する。事例は各種飲料を飲食店等に卸売りしている会社の配送センターでの出荷作業の改善である。 

悩みは配送準備に時間がかかることであった。遅配などでお客様に迷惑をかけないためには、決められた時間までに配送車は配送センターを出発しなければならない。ピッキング等の配送準備に時間がかかるため、ドライバーは朝早い時間に出社して作業を始めなければならず負担になっていた。ドライバーの負担を減らすため、様々な改善に取り組んできたが、その一例を紹介する。 

改善前のドライバーの配送準備の作業工程は次の通りである。 

①配送コース別のピッキングリストを見て商品毎にピッキングする、②商品をトラックに積む、③ハンディターミナルでピッキングした商品のバーコードを読み取り、ミスがないか確認する、④商品を顧客別に仕分けする(なおドライバー担当以外の作業として、顧客別仕分けの前に別要員が検品している)。 

前回、説明した「ムダ発見の3キーワード」の一つである「タッチ数」で見ると、改善前は4タッチである(「作業工程①から④までドライバーは一つの商品に4回触れている」の意味)。 

タッチ数を減らすアイデアとして、ピッキングリストを見てピッキングするのではなく、ハンディターミナルの指示表示に従って商品のバーコードを読み取り確認しながらピッキングするという案が考えられた。 

その場合、作業工程は、①ハンディターミナルで商品のバーコードを読み取り、ミスがないか確認しながらピッキングする、②商品をトラックに積む、③商品を顧客別に仕分けする、となりタッチ数は3回と1回分減ることになる。 

良い案のようであるが、しかしこのような作業工程は実際にスムーズにできるであろうか。ピッキングに手間取り、逆に時間がかかってしまうのではないかという疑問が湧く。 

疑問があったら実際にトライアルして確かめてみるのが改善の定石である。製造業ではトライアル前に目的に合った測定分析用紙を設計・準備し、トライアル時にはストップウオッチ片手に観測・測定し、トライアル後にはデータの集計・分析となるが、サービス業においてはこの流れは分かりやすいとは言えない。 

動画を活用する場合は、測定分析用紙等の準備は不要であり、ただ改善前と改善後の作業の動画を撮るだけである。トライアル後も、図のような作業分析ソフトを活用すればマウス操作のみでトータル時間だけなく、個別の作業時間も容易に把握することができる。 

今回は、ドライバー達に、図のような改善前と改善後が並んで同時に再生する動画を見てもらい、改善後の作業工程でもスムーズに作業できること、ピッキング時間は変わらないこと、従ってトラックに積んだ後のバーコード読み取り確認が不要になる分、トータルでは時間が短縮されることを確認してもらった。 

文字と数字だけの集計・分析結果の説明ではなく、動画を見ての確認なので、慣れない人でも改善結果についての理解と納得がしやすい。このような改善の流れはサービス業にとって分かりやすいものであり、衆知を集めて改善が進められるため、適用範囲が広いと言える。次回は、事例をもとに動画を活用したマニュアルの作成および展開について紹介する。

コンサルタント紹介

主席経営コンサルタント

高田 晴弘

早稲田大学理工学部応用物理学科卒業後、東洋ゴム工業株式会社化工技術本部にて新製品開発関連業務を担当。工程改善・品質不良対策等による生産効率向上にも寄与。
日本生産性本部経営コンサルタント養成講座を修了、本部経営コンサルタントとして、各種事業体の診断指導、人材育成の任にあたる。
(1959年生)

お問い合わせ先

公益財団法人日本生産性本部 コンサルティング部

WEBからのお問い合わせ

電話またはFAXでのお問い合わせ

  • 営業時間 平日 9:30-17:30
    (時間外のFAX、メール等でのご連絡は翌営業日のお取り扱いとなります)