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生産性新聞連載記事「働き方改革を支える生産性向上」(1)

主席経営コンサルタント 中間 弘和(Hirokazu Nakama)

中間 弘和 組織と個の融合 どう実現

働き方改革の目指すところは、「働く方一人ひとりが、より良い将来の展望を持ち得るようにすること」とされています。事の是非は別にして、私たちができることは「働きがいの創出」と「労働生産性の向上」の双方を高めていくこと、すなわち、組織と個の融合を図ることにあります。さらに、「働く人の目線」が強調されていることを勘案すると、働く人寄りの取り組みの必要性が求められていますが、そのことは人材不足対策にもプラスになるといえます。

留意点としては、「マクロとミクロ」を混同して議論しないことと「国、組織、個人等の様々なレベル」で議論すべき事項を一緒くたにしないことです。議論が矮小化し、非建設的な方向に流れては本末転倒になってしまうからです。

◆ありたい姿と基本方針
取り組みにあたって最初にやるべきことは、「ありたい姿」と「実現のための基本方針」を描くことであり、そうでなければ掛け声倒れや一過性のイベントに終わりかねません。「欧米流=善、日本流=悪」に陥ることを避けるためにも、自社・組織体のありたい姿を描くことを推奨します。どんな相手からでも良いところを学べることが日本流の良さであり、そのことは守るべき日本流を捨て去ることではないと考えます。さらには、「生産性が高い=善、生産性が低い=悪」の構図も危険であり、あくまでも自社の理念や方針に基づくべきものといえます。

◆経営的視点
仕事とは「資源を投入し、目的に沿った何かを生み出す」ことであり、生産性向上とは「資源をうまく活性化・活用して、昨日までよりも質的・量的に高いものを生み出す」ことを指します。生産性の向上は仕事のやりがい・頑張りがいにつながる(工夫・努力すると仕事がうまくいくようになる)と同時に生産性向上の果実を適正配分することによる生活向上や社会的弱者救済の源泉ともなります。逆に、生産性向上なき分配は民間企業であれば経営ひっ迫化、公共事業体においては財政ひっ迫化の要因となり、事業の中断や提供サービスの劣化を引き起こします。
労働生産性の基本形は、分母は総労働時間×人数であり、分子は付加価値=収入-外部調達価格(卸・小売業では粗利)となります。この労働生産性を向上させるためにどの施策が効果を発揮するかを見極めながら諸施策を展開することが必要であり、目標を数値化することによって、はやりや自己満足に陥ることなく、よりブラッシュアップされた骨太の施策展開が可能となります。生産性が業界最下位であったチェーン小売業において、「非正社員の定着率向上(平均勤続年数の引き上げ)」がもっとも効果があると推定され、実際の施策展開によって業界トップまで改善された実例もあります。

◆働く側の視点
一昔前にコース別・複線型人事管理がはやった時期がありましたが、当時のあくまでも会社に対して貢献度を問う目的とは異なったコース別人事管理が今後は必要になってくると思われます。諸般の事情やライフスタイルの違いによって、一時的・恒常的に「会社に対して全精力を傾けられない・傾けない」働き方を積極的に容認・活用する施策が求められているといえます。そのためには部分的に労働力や知恵を活用する業務の整理や多様な働き方を可能とするITを筆頭としたインフラ整備が必要となります。同じ日・同じ時間・同じ場所に集まらなくても協働できる環境づくりです。

一方、これまで以上に仕事に没頭したい人もいるのではないでしょうか。クリエイティブな分野や研究的な分野においては「三度の飯より・・・」ということもあると思います。現行の労働法や労働行政は労働安全衛生の観点からも労働時間については厳しく管理することを求めていますので、そのような働き方を望まない人が「フリーランス」という働き方を選択する場合も増えると思います。

日本は、低生産性が指摘される一方で「事業継続」では世界でトップクラスに位置しています。今こそ日本的経営の良さを見つめ直し、切磋琢磨しつつオールジャパンでさらなる発展を期待したいところです。









(2017年5月15日 生産性新聞掲載)

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