第5回:リーダー研修(係長・主任層)~東陽~(2019年11月5日号)

■リーダー研修で理論と実践を融合

東陽(本社=愛知県刈谷市)は、リーダー職(係長・主任層)を対象に、平成29年10月から「リーダー研修」をスタートさせた。

今年で3回目となる研修は、9月から2月までの半年間、月1回のペースで実施している。リーダー職に必要なマネジメントスキルや知識を習得するとともに、研修の間には職場の上司等とコミュニケーションを図りながら職場の課題の解決を図るという、理論と職場での実践を融合させたプログラムが特徴となっている。

東陽は、自動車分野を中心に、製造現場に欠かせない工具や機械を供給してきた。国内では愛知県を中心とし、海外では自動車部品メーカーが進出する国に拠点を拡大している。

リーダー研修は、日帰りの日程で「前回課題の振り返り」→「知識・スキル編~講義による関連知識のインプット」→「実践編~基軸・課題・行動計画の策定」の流れで行われる。

研修の間には、「基軸」(方針や、果たすべき課題や目標を整理したもの)を具体化させるための、職場での実践課題が出される。研修参加者は、職場の上司や同僚、後輩などの関係者と話し合いながら、実践課題の擦り合わせを行い、より良いものに充実させて、次回の研修でその振り返りを行う。


第1回の研修では、チームとして成果を上げるための心構えと準備として「基軸づくり」の必要性を伝える。参加者は研修中に「基軸」を作成する。


第2回では、リーダー職の立場や役割、職場をマネジメントしていくための基本を学ぶ。参加者は各自の目標設定について、関係者と擦り合わせを行う。


第3回では、リーダー職のリーダーシップや、問題・課題発見の基本などを学ぶ。その後、参加者は、各自の課題を設定する。


第4回では、設定した課題の解決策を導くための問題解決スキルの習得を図る。参加者は、立案した解決案について関係者との擦り合わせを行い、実行可能なものとする。


第5回では、論理的な伝え方や、行動計画の策定の仕方を学ぶ。参加者は、策定した行動計画が職場で実行できるように摺り合わせを行う。


第6回では、研修で作成した基軸に基づく目標を達成するための行動計画を経営幹部や上司に発表し、決意表明を行う。

発表の半年後に開催されるフォローアップ研修では、参加者が行動計画の進捗状況を発表し、成果を確認する。

研修の成果について、酒見知彦・東陽専務取締役は、「後輩を育てていこうという機運が出てきて、社員の意識改革が進んだ。研修での議論を通して、他部門がどんな仕事をしているか、メンバーがどういう考え方で仕事をしているのかがわかるようになった。自分の意見を発表し、他部門の人と意見を交換して、議論しながら課題を解決していくという研修方式は非常に好評だ」としている。

■組織力強化と女性活躍推進図る

(酒見知彦・東陽専務取締役の話)

これまでの研修は、営業の知識・話法・スキルの習得など、個の力を伸ばす内容が多かった。対象も営業部門が中心で、単発の研修が多かったので、研修内容がなかなか組織に定着しなかった。営業担当が各人で業績を上げてくればいい、他の部署が何をやっているかは自分の仕事には関係ない、といった個人商店のような雰囲気が社内にあった。課長もプレイングマネージャーが多く、自ら稼ぐことが重視された。しかし、お客様の要望が多様化し、お客様に認知されるには、個の力も大事だが、社内の横の連携によって、お客様の課題を解決し、組織力で販売することがより重要になっている。

そこで、4~5年前から、組織力強化の一環として、継続的に研修を実施する方向に舵を切った。部長や次長を対象とする選抜研修をスタートさせたのに続き、全体的な底上げを図るためのリーダー研修を2年前にスタートさせた。課長も従来のプレイングマネージャーではなく、人材育成を図り、戦略を立案し、組織で実行して、売り上げや生産性を上げていくということをしっかり部下に伝える必要がある。

今まではお客様に育ててもらっていたが、これからは会社として「育てていく」ことが重要だ。それを課長になってから学んでいては遅いと考え、その下のリーダー職を対象とした。研修のもう一つのねらいとしては女性活躍の推進がある。従来、営業部門以外の女性社員にとっては、新入社員研修以降は研修を受ける機会がほとんどなく、受講に対する気持ちや考え方を心配していた。幸い、リーダー研修の講師からは、女性社員は非常に前向きに研修に取り組んでいると聞いている。会社としても、女性の営業への登用をよりいっそう進めていきたいし、内勤の社員が営業支援を行う「インサイドセールス」の育成も進めている。女性社員のよりいっそうの活躍を期待しているというメッセージをどんどん社内に発信していきたい。

今後は、継続的に研修を実施するとともに、管理職にマネージャーとしての仕事の割合を増やしていくための全社的な仕組みづくりなどを図り、組織力強化を重視する組織風土を醸成していきたい。

■リーダー職とはキャプテンである

筒井健太・日本生産性本部主任経営コンサルタントの話)

私は「リーダー職とはキャプテンである」と考えている。サッカーに例えれば、監督(管理職)はチームの目的・目標の明示から達成までのすべてのプロセスにおいてリーダーシップを発揮することが求められるのに対し、キャプテン(リーダー職)はチームにメンバーの一人として参加しながら、与えられた役割・権限に従ってメンバーを統率していくことが求められる。キャプテンの腕章を付け、選手の一人として現場を走りながら、現場を統率し、勝つ努力を重ねていく。

リーダー職は、管理職ではないので、ポジションパワー(組織的な職位や権限が基盤となる力)は行使できない。そこで重要となるのがパーソナルパワー(専門的な知識、人間的な魅力、正当性など)だ。パーソナルパワーに由来する信頼関係があれば、受け手はリーダーを受け入れてくれる。リーダー職は信頼を獲得することが大事だ。

■成果を具体的に把握できる研修

村岡伸彦・日本生産性本部主任経営コンサルタントの話)

研修の間に一定の期間を置く研修の良い点は、第一に、演習課題(行動計画)についてしっかりと検討する時間が豊富にあること。第二に、自分一人で検討するのではなく、上司や同僚、後輩などの関係者の意見やアドバイスをもらいながら、課題を検討できるので、課題解決のレベルが上がること。第三に、課題の計画作成段階から関係者を巻き込むので、計画の実現可能性が高まること、の三つが挙げられる。

フォローアップ研修を含めると、研修の開始から終了までは約1年あるので、その間に「行動計画が実行され職場の課題が解決した」「目標が達成され、業績が向上した」といった研修の成果を具体的に把握できる。研修を通じて、職場で実際に成果が表れることは、研修を主催する総務人事部門にとっても、参加者を送り出した現場の管理職にとっても、参加者本人にとっても、大きなメリットがあると考える。

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