第4回:マネジメント強化研修~TKC~(2017年11月25日号)

■マネジメント強化研修を開始

TKC(本社=栃木県宇都宮市)は今年1月から、ミドルマネジメント層のマネジメント強化を目的とした新研修制度をスタートさせた。 

TKCは、会計事務所に対する情報サービスと、地方公共団体に対する情報サービスの二つの分野に専門特化し、独自の地位を築いてきたが、顧客である会計事務所と地方公共団体を取り巻く環境等の変化の芽を適時につかむことが、同社の行動原理である「顧客への貢献」に不可欠であり、それを実現する現場力の強化に向け、ミドルマネジメントのヒューマンスキル(対人関係能力)とコンセプチュアルスキル(概念化能力)のさらなる強化を図っていくことにした。新研修制度の対象者は、全国の事業所に勤務する課長職及びチーフ職(課長代理相当職)533人で、全社員の約24%に当たる。 

対象者は、今年1月から11月にかけて、日本生産性本部の階層別研修「管理者基礎コース」の内容をベースとした2泊3日の企業内研修を神奈川・葉山の生産性国際交流センターで受講した(=写真)。 

同コースでは、管理職の三大役割である業績向上・部下育成・組織力強化の基礎を理解する。管理者の心構え・立場・役割の認識、マネジメントの基本や原理・原則、必須スキルを体系的に学ぶとともに、事例(ケース)を題材に応用力・実践力を養い、マネジメント力を強化する。ヒューマンスキルの各要素であるリーダーシップ、コミュニケーション、ファシリテーション、コーチング、プレゼンテーション、交渉力、調整力を網羅的に学ぶ。最終日には、3日間学んだことの理解度テストを行い、研修内容の理解の促進を図った。 

管理者基礎コースを修了した対象者は、11月から来年8月にかけて、同本部の「人材育成型マネジメントコース」の内容をベースとした1泊2日の企業内研修を葉山の同センターで受講する。 

11月からの研修では、人がいきいき働き、成長し続けるための条件を、行動科学やマネジメントスキル等の視点から理解するとともに、多様な価値観に応じた豊かな人間関係の構築と論理的なコミュニケーションスキルの習得の方法を学ぶ。 

同社は、ミドルマネジメント層に計5日間の研修を実施することで、100年企業に向けて一層の現場力強化を図っていく。    

■共通の土台、社内に構築

(飯塚真規・同社代表取締役専務執行役員会計事務所事業部長の話)

TKCは昨年創業50周年を迎えた。IT業界、会計ソフト業界ではそれなりのポジションを占めるようになったが、今後、60年、70年を考えると、これまで50年間培ってきたものを組織として継承・変革していく必要があるという課題意識を持っていた。 

例えば、お客様である会計事務所の所長の平均年齢が64~65歳と高いのに対して、社員の年齢22歳から65歳までと幅広く、そこにはギャップがある。課長の年齢は30歳ぐらいから50歳代までいて、一律のマネジメントが難しい状況になってきている。理念や共通の価値観を前提として、経営陣が「こう言えば社員に伝わるだろう」と話しても、現場の若い社員には伝わらなかったりすることがある。 

こうした課題を解決するには、共通の土台をしっかり作らなければならないと感じていた。今回の研修を通して、世間一般のマネージャーに求められる能力やマネジメントのセオリーといったものを課長やチーフにしっかり理解してもらい、弊社のミドルマネジメント層のレベルを高めていきたい。 

対象者全員に一斉に研修を行うのは、昇格した人だけを対象に実施しても、社内の共通言語が生まれにくいと思ったからだ。どう部門を運営していくのか、どう部下を育成していくのかについての共通言語を社内に広く浸透させ、共通の土台を構築したい。 

研修を受講した社員の間からは、「研修で学んだことを実践してみよう」「これまでは自分の経験則で部門を運営していたことがわかった」「もっとマネージャーとして求められるものを貪欲に吸収していきたい」といった声が聞こえてくるようになった。 

今後の取り組みとしては二つを考えている。一つ目は、今回初めてオフィシャルに人を育てていこうという方針を打ち出した。その方法論を学んだマネージャーが今後、どう実践に落とし込んでいくかが重要であり、それを組織として支援していきたい。また、その上司にあたるトップや経営幹部層の研修も充実させたい。 

二つ目は、あらためて弊社ならでのマネジメントスタイルを承継していく必要があると感じている。弊社には歴代の経営トップが記した経営理念や方針、戦略、規範などが書籍や社内報、様々な文書にまとめられている。それをことあるごとに紐解き、説明していくことが自分の責務だと思っている。私が所管する会計事務所事業部で定期的に開催している会議において、直接それらを各部門長に説明しているが、各部門長を通じて各層にブレークダウンさせていくことで、社内への浸透を図っている。 

今後も、社員の力を最大限に発揮してもらうことで、「顧客への貢献」を引き続き果たしていきたい。 

■助けを求める部下の思いを受け止めよう

(研修を指導する三浦哲・日本生産性本部カウンセリング・マネジメントセンター講師の話)

日本生産性本部の「管理者基礎コース」は、マネジメントの基本や原理・原則を3日間で体系的に学ぶ「幕の内弁当」だ。基本や原理・原則をしっかり押さえている人は応用展開ができる。基本がわからなくてもたまたま応用展開がうまくいく人もいるが、次もうまくいくとは限らない。

研修の中で紹介した「カウンセリングマインド」とは、カウンセリングの理論や手法をベースとした態度や行動のことで、部下を持つ人にはぜひ身につけてもらいたい考え方だ。部下を大事にしようというマインドを持っていれば、「傾聴」も自然とできるし、「コーチング」もうまくできる。しかし、そうしたマインドを持たず、テクニックやスキルのみに走ると、逆に部下を責める行動に陥ってしまう。育成のマインドが持てないならばテクニックやスキルを学習しても意味はない。 

社員が成長し、いきいきと働くことができる職場とは、誰もが本音で語り合い、素直に助けを求めることができる職場である。部下(上司)が困っている時に上司(部下)が助けてくれる職場をつくるためには、まず上司の心が豊かであることが重要だ。上司の心が豊かであれば、部下の心も豊かになっていく。部下が相談に来たときに「その程度のことで相談に来るな」「もっと考えてから来い」と言っていたのでは、誰も上司に助けを求めてこなくなる。自己中心的な考えに陥らず、まずは、助けを求めてくる部下の思いを受け止めてほしい。 

今回の研修を受講した方の多くは、部下への関わり方について、部下を主人公とする考え方に新たな気づきを得られたようだ。コーチングを活用し、部下から答えを引き出すことを実践したいという感想もあった。 

世の中の変化を正しく理解し、多様な価値観を持つ人材を経営資源として有効活用していくことが管理職に求められる「人材マネジメント」である。

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