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生産性新聞連載記事「働き方改革を支える生産性向上」(7)

主席経営コンサルタント 大場 正彦(Oba Masahiko)

大場 正彦

(7) 70歳まで継ぎ目ない制度構築


   労働力不足の時代においては、高年齢者の戦力化は外せませんが、多くの企業では60歳以降の高年齢者の雇用にはあまり重きを置いていない印象を受けます。 高年齢者雇用も法令対応にとどまり、戦力として活躍してもらうという視点が弱いと思います。自社に適合した経験・スキルを磨いてきた高年齢者を生かしきれていないのはもったいない話です。

  高年齢者の戦力化を阻害する要因となっているのが60歳定年制と再雇用後の大幅賃金ダウンです。60歳定年制は60歳が職業人生のひとつの節目となり、その後はどうしても〝余生感〟が生じてしまいます。健康寿命が70歳超の現代においては65歳以降に定年を置き、そこまではエイジレスの仕組みとし、余生感を抱かせずに意識と意欲を持続させる必要があります。         

  もう一方の60歳以降の大幅賃金ダウンの問題については、60歳になったとたんに生産性が大幅に落ちるわけではないにもかかわらず、多くの企業では..歳以前の賃金と比較すると大幅にダウンする仕組みとなっています。 賃金が下がれば、従業員の意識としても「もうそんなに頑張らなくてもいいよね」となり、長きにわたって培った経験・ノウハウが十分に発揮されずに生産性を低下させ、ぶら下がり人材をつくりかねず、せっかくの人財が人罪になりかねません。

  新しいものを学習したり生み出したり、新しい環境に適応するといった「流動性知性」は若者には勝てませんが、豊富な経験や知識に基づいた判断力や思考力あるいは統率力といった「結晶性知性」は高齢になるまで維持され、伸びることもあると言われています。自社で培った経験を最大限生かしてもらうためにも、70歳くらいまで継ぎ目のない一貫性のある制度設計が必要ではないでしょうか。 ただし、ここで問題となるのが、〝メンバーシップ〟と表される長期雇用・年功序列といった日本的な労働慣行です。年功的な賃金体系だと、加齢とともに生産性と賃金のミスマッチが大きくなり、70歳までの一貫した人事制度の実現が難しくなります。従って、60歳以前の段階で、貢献度に応じた処遇の実現を図ることが必要となります。 

  一案として、能力開発段階では、ある程度の年功を許容しながら時間をかけて育成し、一定レベルの能力を身に付けた後は、能力発揮(貢献度)に報いる方向へシフトしていく制度が、多くの企業にとって違和感なく受け入れられるのではないでしょうか。人材育成は〝筏下り山登り〟と言われることがありますが、若年層は能力開発期と位置づけ、多様な職務経験を通じて激流に揉まれ(筏下り)、視野拡大と適性発見を後押しする能力主義の人事制度とし(能力等級)、能力発揮期の40歳(目安)以降は、自分の登るべき山(目指すキャリア)を決め、ゼネラリスト系でいくのかスペシャリスト系でいくのかを選択させ、 個人のキャリアニーズと適性に応じた配置・活用を行います。その際の人事制度は年功によらず職務等の貢献度に応じた制度への転換が必要であり(職務等級)、これにより60歳前後における意識と意欲の断絶が起こりにくく、70歳まで継ぎ目のない人事管理が可能となるでしょう。

Oba

(筆者略歴)民間企業勤務後、経営コンサルタントとして、企業の経営指導等で幅広い実績を持つ。専門領域は組織・人材マネジメント革新。経営幹部養成、問題解決、タイムマネジメントなど人材育成分野でも幅広く活躍。著書に『企業経営の理論と実践』(共著、学文社)等。

(2017年7月15日 生産性新聞掲載)




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